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仏教質問箱布教誌『宝塔』に連載中の「仏教質問箱」より

恐い顔の鬼子母神さまと、やさしい顔の鬼子母神さまがあるのはどうしてですか?

藤本典行


 鬼子母神信仰はそもそもインド土着の庶民信仰であったものが、仏教に取り入れられたのである。また、仏教の中でも、平安時代には、天台密教(台密)と真言密教(東密)という二大密教が盛んで、その中で鬼子母神信仰は、一切のことが皆円満に成就すること、また元来のインドでの鬼子母神信仰のように、安産、夫婦和合の成就を願う祈祷法として信仰されていた。その場合の鬼子母神の像は、天女像で、金色身。頭に瓔珞を冠し、宣台の上に坐して、右足を下におろし、左の懐中に一児を抱き、右手には吉祥果(ざくろの実)を持っている。その姿は端麗で豊満なやさしい容姿である。

 それに対して、法華経ではさらに、独自な役割を担っている。それは、法華経の陀羅尼品第二十六に定められている。要約すると、十羅刹女と鬼子母神とその子どもならびにつき従っている者たちが、異口同音に法華経を読誦し受持する者を擁護し、災いをのぞきますと宣言するのである。すなわち、法華経の中では、鬼子母神は法華経の信仰者を擁護する任務を持ったわけであります。さらに、鬼子母神と十羅刹女との関係については、日蓮大聖人が御書『日女品々供養』の中で「十羅刹女と申は十人の大鬼神女、四天下の一切の鬼神の母なり。又、十羅刹女の母あり、鬼子母神是也」と説いて、鬼子母神が十羅刹女の母であることが示されている。このことは、鬼子母神ならびに十羅刹女の造形、また飾り方に重要な意味をしめすことになる。

 つまり鬼子母神が一切の鬼神の母となり、中心的に祭られることとなったのである。また、法華経の行者擁護という守護神としての位置づけから、魔を払(降魔調伏)憤怒形の鬼子母神像ができたとされています。この形のことを鬼形鬼子母神といいます。ここに、恐ろしい容姿の鬼子母神像ができたわけであります。しかし、本宗では、先に述べたやさしい天女像の鬼子母神像と同じく、恐い容姿の憤怒の鬼子母像も祭ります。ただし、憤怒の像は、破邪調伏のための祈祷本尊として、やさしい天女像は安産子育ての祈りの本尊として祭ります。

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